須賀秀文 6/14

オイラーの公式


幾何学的に定義された三角関数というものが、 指数関数という解析的なものと結びつくということは何とも脅威であったが、 それだけにまたその意味が理解できない、 証明はベキ級数を使ってやればいかにも簡単明りょう疑う余地はないが、 何かごまかされたみたいで、あと味が悪い、 ところが、やはり中学生より大きくなっていたので、 そのあと味悪さの原因がどこにあるかに気づいた。 どう気がついたかというと、この定理が出てくる前に、 数の虚数ベキの定義がやってないという点である。 ベキの定義はまず正の整数ベキから出発し、次に負数ベキが逆数と関係させて定義され、次に分数ベキが平方根とか立方根とかに関係させて定義されている。 ここまでは中学校で教えられた。さらに進んで無理数ベキは極限概念として微分学で習っている。ところが虚数ベキの定義になると、まだどこでも習ったことはない。 その習っていないものがいきなり式の左辺に出現したのだから理解できないのは当然である。 そういうことに気がついた。こう気がつくと、この定理の意味は一目りょう然となった。 つまり、これはむしろ虚数ベキの定義そのものなのであると、やはり高校生になると中学生のときとちがって、もやもやとわからないといっていないで、なぜわからないか、どこがわからない原因かと、つきとめることができたのであろうか。


今の私は、どの小説のどの登場人物に等しいか。

もしいないのなら、それは不思議なことである。