須賀秀文 7/19

北海道。

小学4年生の健司は、東京に転校する前に、たった一人、学校にタイムカプセルを埋めた。しかし、それは書き換えられた記憶で、真実は違った。


誠一と彰久は、雅彦をいじめていた。二人は、雅彦と仲の良い健司に、雅彦が大切にしている帽子を盗むよう命じた。


健司は雅彦を誘い、海に遊びに行った。健司はトイレに行くと言って、二人のバッグを林の中に隠した。帰り道、健司は雅彦と同じように、盗んだ犯人を恨み、怒りを露わにした。

翌春、健司は転校した。


20年後、健司は、救いを求めて、母と二人、北海道へ。

健司はタイムカプセルを掘り起こした。そこには、一つの帽子があった。

20年ぶりに再会した雅彦は、健司に全てを語った。


「すまなかった、健司。俺は20年間、お前を苦しめてしまった」


健司は、若くして認知症を患った母との関わり方を、変えなければならないと、心に誓った。


狭い教室に敷き詰められ、あんなにも近くに隣り合っていた机たちは、20年という時間によって、無限に散らばってしまった。

自分を受け入れるため、母を受け入れるため、健司は、過去の記憶たちを広大な大地に埋めた。



籠の目 麹町音頭

天狗のマニキュア  出来レース体操

親愛なる解放区 ゾロ目の大河

決戦は大都会 金曜日の濾過装置

宇宙が生まれる 決して交わらず

アイデンティティの洗濯場

夜の縁結び そして伝説へ