須賀秀文 5/29

HEART STATION

夜勤前
暗い夜の静けさが、心臓の鼓動の輪郭を際立たせる。不安を口にしたら、それに引っ張られ闇に吸い込まれそうで、祈るように頭を垂れて、平穏な夜を願っていた。

駅前の松屋
宇多田ヒカルHEART STATIONが流れていた。曲の旋律と心の波動がシンクロする。ほんの一瞬、私の中に、私から離れる余裕が生まれ、"夜勤前の介護士"を演じてみる。絶妙のタイミングで、音楽がこのドラマを盛り上げる。

バスの中
不安を煽るように、バスは唸りをあげて坂を登る。仕事を終えた人達のため息に心を乱され、救いを求めて窓の外に目を遣った。
そこにはきらめく神戸の夜景が広がっていた。